デザインとは
「デザイン」。わかるようでわからない言葉。よくこのIT業界でも「デザイン」という言葉は耳にするだろう。 この言葉は、仕事以外でも色々な分野で耳にするのではないだろうか。 会社によってはデザイナーと仕事をするところもあるであろう。私が、現在所属している会社は、デザイナーとエンジニアとのコミュニケーションが非常に重視されている。 こうした環境でエンジニアとして活動する中で、自然と「デザイン」に興味を持つようになった。この記事では、「デザイン」とは何であり、どのような歴史をもっているのかをみていきたいと思う。
なぜ、「デザイン」に興味を持ったのか
興味を持ったきっかけは二つある。
一つは冒頭で述べた通り、デザイナーとエンジニアとのコミュニケーションが非常に重視されている会社に所属していることである。そのような環境でエンジニアとして活動していると自然と「デザイン」に触れる機会が増える。機会が増えたことにより「デザイン」に対して深く知りたいという欲が大きくなっていった。
もう一つはアーキテクチャーの歴史を調べていたときに「これはデザインではないか!?」と感じたことである。
アーキテクチャの歴史を知るにはプログラミングの歴史を知る必要があり調べていた。
1940年代に電子計算機が登場して以降、プログラミングの方法は機械語、アセンブリ言語、高水準言語へと変化してきた。その後も、構造化プログラミングやオブジェクト指向など、より人間が理解しやすく設計しやすい考え方が生まれてきた。
この流れからテクノロジーの進化の一つに「扱いにくかったものを扱いやすくする」という問題解決思考が含まれていると考えた。その時、この要素ってデザインなのでは? と感じた。
これらのきっかけで「デザイン」に深い興味を持った。
「デザイン」いう言葉を調べた結果
「デザイン」という言葉を調べた時にいろいろな定義が出てきた。
wikipediaの説明では
与えられた環境下で一定の目的を達成するために利用可能な要素を組み合わせて要求に合った人工物を生み出すこと
と書いてある。
ただ、定義自体は色々なところで色々な定義をされている。
例えば、日本デザイン振興会では
「常にヒトを中心に考え、目的を見出し、その目的を達成する計画を行い実現化する。」この一連のプロセス
スティーブ・ジョブズは
It’s not just what it looks like and feels like. Design is how it works. (特定環境・制約・要件下での目的達成を意図して、ある主体が、基本的な構成要素を用い、対象の仕様を生み出すこと)
ポール・ランドは
Design is a relationship between form and content. (デザインとは形と中身の関係である)
と述べている。
私はこれらの定義を読んでも全くイメージがつかなかった。 さらに、多くの人がそれぞれの言葉で定義している部分から「デザイン」の定義をするのは難しいと思った。
歴史
「デザイン」を紐解くために歴史を見てみることにした。
産業革命
19世紀後半、産業革命に伴い多くのものが生成された。それまで手作業だったものが機械化されたことによって、多くの失業者が出てしまった。
アーツ・アンド・クラフツ運動
機械化によりスピードとコストを優先するあまり、品質が疎かになり、粗悪品が大量に出回るようになった。手仕事ならではの丁寧さや美しさというのが失われていった。 そこで、登場したのがウィリアム・モリス。 彼が中心となって「アーツ・アンド・クラフツ運動」を起こす。 この運動は「本来の美しさ」を取り戻そうとしたものだった。
アール・ヌーヴォー
アーツ・アンド・クラフツ運動は多くの人々に影響を与えた。 植物などの有機的なモチーフや曲線を用いた新しい装飾洋式が生まれた。それが、「アール・ヌーヴォ」である。 これらを代表するのがアルフォンス・ミュシャで、「買いたい」と思わせるためのビジュアルが使われていた。 webバナーや広告デザインの源とも言える考え方になっている。
産業化は止まらない
産業化そのものは止まることはなかった。 結果的に機械を前提として美しさを考え、機能や構造そのものを整えることが美しさにつながるのではないかという思想からデザインの考え方は大きく変わっていく。
工業生産を否定するのではなく、社会のためにどう生かすのか。 機能性や合理性を重視する新しい美学でありモダニズムの思想が生まれてくる。
ここで、デザインは「表面を整える仕事」から「社会のその仕組みそのものを設計する仕事」へと姿を変えていった。
バウハウスの開校
こうした流れを受けて、芸術と工業を結びつける教育を実践したのがバウハウスである。バウハウスでは、画家、建築家、工芸家など、異なる分野の人々が集まり、学び、議論し、実験を重ねた。
そこで重視されたのは、単に美しいものを作ることではない。「なぜこの形なのか」「なぜこの素材なのか」といった問いを通して、形や機能、素材、製造方法の関係を考えることである。
芸術と工業、表現と機能を切り離さずに考えるこの姿勢は、現代のモダンデザインの基礎の一つとなった。
バウハウスの閉校
ナチス・ドイツの弾圧により閉校となってしまう。 しかし、そこから巣立った彼らはデザイン教育や建築の基礎を築いていた。
デザインは、特別な才能のひらめきではなく、社会と向き合いながら設計していく行為である。
産業革命によって「どうしたら美しくて使いやすいものが作れるのか?」の答えが上記の言葉である。
バウハウスの最後の校長は以下のように言っている。
「Less is more.」(必要最小限のもので最大限の豊かさを得る)
本当に必要なものだけを残すこと、そして細部まで丁寧に設計をすること。 この考えが現代にも受け継がれており、シンプルで整ったデザインはこの時代に生まれた。
結局デザインとはなんなのか
デザインの歴史を調べていく中で、一番腑に落ちたのは、デザインとは設計する行為であるという部分だ。デザインという言葉について改めて考えてみると、私の中では設計という言葉が最も近い。実際に辞書で designを調べても、「設計する」「デザインする」といった意味が出てくる。
以上から、私はデザイン = 設計なのだと捉えるようになった。
歴史を調べてみて
現代のデザインの考え方は産業革命から始まっている。今現在2026年はまさにAIの発展が凄まじく、第二の産業革命と読んでも良いと時代だと思っている。「歴史は繰り返される」とよく聞くので、現代のデザインの考え方の見直し、新しいデザインの考え方が生まれるのではないかと考える。
デザインは色々なところで行っている
デザイン = 設計という結論に基づいて、これはモノづくり以外でも使っているものなのではないかと思った。冷静に考えてみると大学の授業等で行われる「キャリアデザイン」、スポーツの実況で「デザインされた攻撃」といった言葉を聞く。 キャリアデザインは、将来の「ありたい姿」や理想の働き方を自分自身で主体的に描き、実現に向けた計画を立てて行動していくプロセスである。デザインされた攻撃は偶然に頼らず、練習や作戦で細部まで緻密に計画された攻撃である。 これらの2つから目的を達成するための設計という言葉がとても合っているのではないかと思う。これはモノづくりだけに限らず色々なところで使われていることがわかる。
まとめ
デザインという言葉は良く聞くが定義が中々難しい言葉でもある。だからこそ色々な人が色々なデザインに対して色々な表現をしている。
デザインの歴史を調べたことで、
- 人が社会と向き合いながら設計していく行為
- 目的を達成するための設計 と捉えた。
デザインはモノづくり以外の領域でも使われており、すべての人々が自然と使っている言葉なのだ。デザインというものを学ぶことで何か違ったベクトルからのアプローチであったり考え方が変わり新しい景色が見えるのかもしれない。私はそう感じた。
参考文献
後日談
デザイナーと話す機会があった。 デザインは設計だけでなく意匠も含まれると。
意匠とは、
美術・工芸・工業製品などで、その形・色・模様・配置などについて加える装飾上の工夫。デザイン。
確かにこれを読むと意匠もデザインだ。
私は、
- 人が社会と向き合いながら設計していく行為
- 目的を達成するための設計
と書いていたが、
- 人が社会と向き合いながら設計していく工夫
- 目的を達成するための工夫
ではないかと教えていただいた。
デザインは設計に留まらないということを後日知った。

