私が考えるデザインエンジニアリング


先日、デザインについて調べたことを綴った。

デザインとはblog-from2026.pages.dev

デザインは広義に使われている言葉であり、改めて面白いものだと実感した。 歴史を振り返ることで、現代のデザイン思想へどのように移り変わってきたのかを知ることもできた。また、デザインというとモノづくりに目が向きがちだが、実際にはさまざまな場面で使われているという考察も生まれた。

前回はデザインそのものについて触れたので、今回はデザインエンジニアリングについて考えてみようと思う。

デザインエンジニアリングとはどのようなものなのか。デザイナーとエンジニアにはそれぞれどのような特徴があるのか。Ginger Design Studioの「Design Engineering」を参考に、デザインエンジニアリングの考え方や事例を整理したうえで、ITエンジニアである私自身の考察を加えていく。

デザインエンジニアリングとは

私はデザインエンジニアリングを、デザインとエンジニアリングのプロセスを分離せず、同時に進めていくことだと捉えている。

この世界には、デザインを専門とするデザイナーと、エンジニアリングを専門とするエンジニアが存在する。

それぞれが別々のフェーズだけを担当するのではなく、同じプロセスに関わりながらデザインとエンジニアリングの両面から考えることで、より良い課題解決につながる可能性が高くなる。

デザイナーとエンジニアが共存しないと

例えば、提案・要件定義フェーズで考えてみる。

デザインを「何を作るか」という What、エンジニアリングを「どのように作るか」という How と表現できる。 デザイナーはWhatを考えることに長けており、エンジニアはHowを考えることに長けている。このように置き換えて考えることができる。 デザイナーだけで考えると、実現方法を十分に考慮せずに提案することになり、技術的に実現できない可能性がある。 一方でエンジニアだけで考えると、既存の技術や実現可能な手段から作るものを決めてしまい、本来解決すべき課題ではなく、「作れるもの」にWhatが制限される可能性がある。 つまり、Whatだけでは実現性が不足し、Howだけでは作れるものの範囲に発想が閉じてしまう可能性がある。 どちらか一方だけで一つのフェーズを進めるのではなく、WhatとHowの両方から考えることが重要なのだと思う。

デザイナーとエンジニアのプロセス共存のメリット

提案・要件定義では、エンジニアとデザイナーが同じフェーズに関わることで、How(どう実現するか)を考えながらWhat(何を作るか)を考えられる。 これにより、実現可能性を考慮しながら、課題を解決するために何を作るべきなのかを検討できる。これは、デザインとエンジニアリングを一つのプロセスの中で行うメリットの一つである。

また、この関係は提案・要件定義だけに限らない。

実装フェーズでも、実際に動くものを見ながら、使いやすさや表現、技術的な制約について、デザイナーとエンジニアが相互にフィードバックできる。

デザインを完成させてから実装するという一方向の流れではなく、実装によって得られた気づきをデザインへ戻し、調整したものを再び実装するという反復がしやすくなる。

つまり、

What → How

という一方向の関係ではなく、

What ⇄ How

と往復しながらものを作っていけることが、デザインエンジニアリングの特徴の一つだと考えている。

デザインエンジニアリングの事例

ここで事例を見ていこうと思う。

デザインの歴史に登場する有名なデザイナーに、チャールズ&レイ・イームズがいる。二人は1946年に発表されたDCW(Dining Chair Wood)などの家具で知られている。

DCWには、薄くスライスした木材を重ねて作るプライウッド(成型合板)の技術が用いられている。チャールズ&レイ・イームズは、この合板を熱と圧力によって三次元的な曲面に成型する技術を追究し、家具へ応用した。

ここで重要なのは、単に新しい形の椅子をデザインしただけではないという点である。

実現したい形や使い心地を考える一方で、それをどのような素材や加工方法、製造技術によって実現するのかを追究した。その結果として、成型合板という技術を家具へ応用していった。

つまりDCWでは、「どのような椅子を作りたいのか」というデザイン上の要求と、「それをどのような素材や技術で実現するのか」というエンジニアリング上の課題が切り離されていない。

どれほど良いデザインを描いても、技術的に実現できなければ製品にはならない。一方で、技術的に実現可能であるだけでも、必ずしも人にとって使いやすく、魅力的なものになるとは限らない。

デザインとエンジニアリングの双方を行き来しながら、実現したいものと、それを可能にする技術を一緒に考えていく。

DCWは、そのようなデザインエンジニアリングの一例だと考えられる。

デザインエンジニアリングをする上で大事なこと

発想として一番分かりやすいのは、デザインとエンジニアリングの両方を一人で行うこと、すなわちデザインエンジニアになることである。

ただし、全員がデザインエンジニアになるのは難しい。簡単に両方の専門性を身につけられるのであれば、そもそもデザイナーとエンジニアという専門職に分かれていないはずだ。

そのため実際には、デザイナーとエンジニアが一緒に取り組む場合が多いのではないかと思う。

そのときに大事になるのが、専門性の違いを認めながら、領域を隔てすぎないことではないかと考えている。

エンジニアもデザインについて考え、一定の提案を行うことはできる。しかし、人や社会、ユーザー体験と継続的に向き合っているデザイナーと比べると、デザインに対する視野や選択肢の広さに差が生まれることはある。

一方で、デザイナーがどれほど豊富なアイデアを持っていたとしても、そのアイデアに技術的な実現可能性まで含まれているとは限らない。

どのような技術を用いるのか。どのような構造として設計するのか。そして、それをどのように実際に動くシステムとして実装するのか。

こうした実現方法に対する知識や選択肢の広さは、日頃からシステムの専門的な部分と向き合っているエンジニアの強みである。

それぞれの職種には、それぞれ異なる特徴と強みがある。だからこそ、互いの専門性には敬意を払うべきである。

ただし、敬意を払うことは、役割を完全に分離して相手の領域に関与しないことではない。

エンジニアも、なぜこのデザインになっているのか、ユーザーにどのような体験を与えたいのかと向き合う必要がある。

デザイナーも、技術的に何が可能なのか、それを実現するためにどのような負担や制約が生じるのかと向き合う必要がある。

デザイナーがアイデアを出し、エンジニアがそれをそのまま実装するだけでは、両者の専門性を十分に生かすことはできない。

デザインと技術の境界で互いに意見を交わし、目的、体験、実現性の間にある最適な形を共につくることが、デザインエンジニアリングにおいて重要なのだと思う。

課題は次から次へと出てくるよ、どこまでも

人間は欲深い生き物だ。

新しく便利なものが登場すれば、「もっとこうしたい」という欲が出てくる。また、「ここは使いづらい」「この部分は気に入らない」といった不満も出てくるだろう。

つまり、一度課題を解決するものを提供したからといって、そこで完全に終わるわけではない。

実際に多くの人に使われるようになれば、それまで想定していなかった使われ方や、さまざまな意見が出てくる。そこから新しい課題が見つかり、再び改善していくことになる。

私が良いと考えるプロセスは次のようなものだ。

  1. 何を作るのかを決める
  2. 作るものを設計する(UIなど)
  3. 開発する
  4. ユーザーに提供する
  5. フィードバックを収集する
  6. 分析する
  7. 既存のものを改善するなら2へ、新しいものを作るなら1へ戻る

特に重要なのは、フィードバックを受け取り、それを分析するところである。

作って終わりではなく、実際に使われた結果から課題を見つけ、再びデザインとエンジニアリングへ戻していく。

このサイクルを繰り返すためにも、デザインとエンジニアリングが分離せず、互いに関わり続けることが重要だと思っている。

この一連の流れを円滑に回しながら、継続的にものを改善していけることも、デザインエンジニアリングの強みの一つなのではないだろうか。

まとめ

人間にはさまざまな価値観や考え方があり、ものが多くの人に使われれば、それだけ多くの意見が生まれる。

一つの課題を解決したとしても、そこからまた新しい課題が生まれる。ものづくりは、一度作って終わるものではない。

私は、デザインエンジニアリングをデザインとエンジニアリングのプロセスを分離せず、同時に進めていくことだと捉えている。

デザインとエンジニアリングの両方を高いレベルで扱えるデザインエンジニアは多くない。そのため、デザイナーとエンジニアが同じプロセスに関わりながら、デザインエンジニアリングを実践していくことが重要になる。

デザイナーとエンジニアには、それぞれ異なる専門性と強みがある。

互いの専門性に敬意を払いながらも、役割を完全に分離するのではなく、デザインと技術の両方の領域に関わっていく。

異なる視点を持つ人々が共に考えることで、一人では思いつかなかったアイデアが生まれたり、より使いやすく、より実現性の高いものを作れたりする可能性が高まる。

そして、一つの課題が解決されても、そこで終わりではない。

実際に使うユーザーの声や行動を分析し、デザインと技術の両面から改善を重ねることで、ものは少しずつ進化していく。

異なる専門性を交わらせながら、つくり、確かめ、改善し続けること。

それが、デザインエンジニアリングの価値なのではないだろうか。

参考文献

https://www.gingerdesignstudio.com/design-engineeringgingerdesignstudio.com